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在庫回転率の計算と改善|EC在庫の持ちすぎ・切らしすぎを直す

在庫回転率は、売上原価を平均在庫金額で割り、在庫が年間に何回入れ替わったかを示す指標です。逆数にあたる在庫回転期間は、同じ状態を「在庫がひと回りするまでの日数」として裏側から見たものです。
ECでは回転率だけを高めず、欠品率や粗利、在庫カバー日数、受注残と組み合わせて管理します。この記事では、数字の出し方と、持ちすぎ・切らしすぎをどう直すかを順に見ていきます。
在庫回転率とは何を表す指標か
在庫回転率は、在庫に投じた資金を、一定期間に何回売上へ変換できたかを示します。
在庫回転率とは、一定期間に商品在庫が何回入れ替わったかを表し、仕入資金の効率を確認する経営指標です。
中小企業庁が示す基本的な計算式は、次のとおりです。
在庫回転率(回)=期間中の売上原価÷平均在庫金額
平均在庫金額=(期首在庫金額+期末在庫金額)÷2
平均在庫250万円、年間売上原価1,000万円なら、在庫回転率は年4回です。 同じ在庫で売上高が1,500万円なら、売上高基準では年6回になります。
| 比較項目 | 売上原価基準 | 売上高基準 |
|---|---|---|
| 計算式 | 売上原価÷平均在庫 | 売上高÷平均在庫 |
| 主な目的 | 資金効率や財務の比較 | 商品・チャネル内の継続比較 |
| 長所 | 分子と分母を原価で統一できる | モール売上から計算しやすい |
| 注意点 | SKU別原価が必要になる | 粗利率が高いほど高く見える |
EC事業全体では、原価基準を基本指標にするのが適切です。 売上高基準も利用できますが、異なる基準の数値を同じ目標と比較してはいけません。
在庫回転期間と在庫カバー日数はどう計算するか

在庫回転期間は過去の保有実績を示し、在庫カバー日数は将来の販売可能期間を示します。
原価基準の在庫回転期間は、次のいずれかで求められます。
在庫回転期間(日)=平均在庫金額÷年間売上原価×365
在庫回転期間(日)=365÷在庫回転率
回転率が年4回なら、回転期間は約91日です。 売上高基準を使う場合は、年間売上原価を年間売上高に置き換えます。
一方、在庫カバー日数は現在庫と将来需要から計算します。
在庫カバー日数=現在の販売可能在庫÷1日当たり予測販売数量
| 指標 | 見ている対象 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 在庫回転率 | 過去の売上原価と平均在庫 | 資金効率の評価 |
| 在庫回転期間 | 過去に在庫を保有した日数 | 滞留状況の把握 |
| 在庫カバー日数 | 現在庫と将来の需要 | 発注・欠品予測 |
過去の回転率が良好でも、需要が急増したSKUは欠品します。 発注判断では、回転期間とカバー日数の両方を確認してください。
ECの在庫回転率は何回を目安にするか
公的統計では無店舗小売業が原価基準6.0回ですが、絶対的な合格ラインではありません。
中小企業実態基本調査の集計値から試算した参考水準は、次のとおりです。
| 業種 | 売上高基準 | 売上高基準の日数 | 原価基準 | 原価基準の日数 |
|---|---|---|---|---|
| 小売業計 | 13.0回 | 28.1日 | 9.1回 | 39.9日 |
| 各種商品小売業 | 30.2回 | 12.1日 | 22.5回 | 16.3日 |
| 衣服・身の回り品小売業 | 6.5回 | 56.0日 | 3.5回 | 102.8日 |
| 飲食料品小売業 | 33.0回 | 11.1日 | 23.3回 | 15.7日 |
| 機械器具小売業 | 9.1回 | 40.1日 | 6.8回 | 53.4日 |
| その他の小売業 | 13.7回 | 26.7日 | 9.7回 | 37.5日 |
| 無店舗小売業 | 9.4回 | 38.8日 | 6.0回 | 61.2日 |
この数値は楽天市場店舗の評価基準ではなく、中小企業全体の集計値による参考値です。 無店舗小売業には、カタログ販売や訪問販売などが含まれる可能性もあります。
また、年度間で回答企業が同一とは限らず、平均在庫は統計集計値からの近似です。 自店では無店舗小売業と商品業種を参照し、過去12~24か月の推移と比較します。
化粧品や家具など、楽天店舗の商品ジャンル別基準は公開情報で確認できません。 目標設定時は、お使いの公式マニュアルや社内実績も確認してください。
回転率が低すぎる、高すぎると何が起こるか
低すぎる回転率は資金固定を招き、高すぎる回転率は欠品や機会損失を招きます。
| 状態 | 想定される状況 | 主な影響 |
|---|---|---|
| 低い | 販売速度より仕入れが多い | 資金固定、倉庫料、棚卸工数の増加 |
| 低い | SKU過多や需要予測の外れ | 値下げ、廃棄、陳腐化の発生 |
| 適正 | 需要と補充能力が釣り合う | 資金効率と販売機会を両立 |
| 高すぎる | 安全在庫や補充能力が不足 | 欠品、広告費の無駄、顧客離脱 |
| 高すぎる | 少量発注を過度に反復 | 荷受け費、緊急配送費、仕入単価の上昇 |
季節商品の売れ残りや、新製品発売後の旧製品は価値が低下する場合があります。 反対に在庫を減らしすぎると、広告掲載中の商品まで欠品しかねません。
回転率だけでなく、粗利額、欠品率、廃棄率、値下げ率も確認します。 さらに90日・180日・365日超の在庫金額を分けると、滞留の深刻度が見えます。
在庫回転率を改善するには何を見直すか
発注条件、SKU構成、滞留在庫、在庫精度、販促計画を一体で見直す必要があります。
| 打ち手 | 実施内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 発注点の再計算 | リードタイム中の需要に安全在庫を加える | 納期の平均だけでなく、ばらつきも含める |
| ABC分析 | 売上原価や粗利額でSKUを順位付けする | 売上だけでは高粗利商品を見落とす |
| ABC×XYZ分析 | 重要度と需要の安定度を組み合わせる | セール需要を平常需要に含めない |
| 滞留在庫の消化 | 値下げ、セット販売、他チャネル移送を行う | 利益とブランドへの影響を確認する |
| SKU整理 | 低回転・低粗利商品の再発注を止める | 集客に寄与する商品は別途評価する |
| 仕入条件の交渉 | 小ロット化、分納、納期短縮を相談する | 単価上昇と在庫削減効果を総額で比べる |
| 在庫精度の改善 | 返品、破損、移動中在庫を分離する | 帳簿在庫と現物を定期的に照合する |
| 販促との連携 | 広告対象SKUの安全在庫を確保する | 販促終了後の残在庫処理も設計する |
予約販売や受注発注も先行在庫の抑制に役立ちます。 ただし引渡時期は具体的な期限で表示し、「入荷次第」だけで済ませてはいけません。
楽天・Amazon・自社ECの在庫はどう集計するか

全社回転率では販売チャネル別の表示数ではなく、自社所有在庫を一度だけ集計します。
全社回転率=全チャネルの売上原価合計÷全拠点の自社所有平均在庫
| 在庫の所在・状態 | 全社回転率での扱い |
|---|---|
| 自社倉庫・実店舗 | 自社所有なら含める |
| RSL預け在庫 | 含める |
| FBA預け在庫 | 通常は含める |
| 外部3PL在庫 | 自社所有なら含める |
| 倉庫間移動中 | 会計上の自社在庫なら含める |
| 受注引当済み・未出荷 | 棚卸資産に含め、利用可能在庫から除く |
| 返品検品中・破損品 | 帳簿在庫と販売可能在庫を分ける |
| 委託販売・ドロップシップ | 所有権と契約条件を確認する |
RSLやFBAは保管・出荷を代行する仕組みであり、預けた在庫が消えるわけではありません。 ただし廃棄確定品や補償処理中の商品は、契約と経理方針を確認してください。
同じ現物100個を三つのモールに各100個と表示しても、全社在庫は100個です。 チャネル表示数を合算すると、在庫を三重に数えるため注意が必要です。
受注残と在庫回転率はどう関係するか
回転率が高くても、販売可能在庫や出荷能力が不足すれば受注残は増加します。
受注残とは、注文が確定しているものの、まだ出荷を完了していない注文または未出荷部分です。
期末受注残=期首受注残+当期確定受注-当期出荷-キャンセル・減額
| 区分 | 管理方法 |
|---|---|
| 注文確定・出荷待ち | 受注残に含める |
| ピッキング・梱包中 | 受注残に含める |
| 一部出荷済み | 未出荷部分だけを含める |
| 決済・住所確認待ち | 保留理由を分けて管理する |
| 予約商品の約束日前 | 将来受注残として分離する |
| 約束日を超過した注文 | 遅延受注残として優先する |
| キャンセル済み | 受注残から除外する |
在庫同期の遅れ、需要急増、調達遅延、倉庫能力不足などが主な増加要因です。 複数商品のうち一商品が欠品し、注文全体が止まるケースもあります。
受注残が長引くと、キャンセルや問い合わせ、緊急配送費が増えます。 楽天上の具体的な評価条件や上限値は、公開情報だけでは確認できません。 お使いの管理画面と最新の公式マニュアルで確認してください。
毎日の在庫管理をどのように進めるか
全社、チャネル、SKUの順で数字を分解し、原因別の対策へ落とし込みます。
- 売上原価基準か売上高基準かを決め、社内資料に明記します。
- 月末在庫金額を集計し、12か月分の平均在庫を計算します。
- 全社、商品分類、SKUの順に回転率と回転期間を算出します。
- 現在庫から在庫カバー日数を出し、欠品候補を抽出します。
- 滞留在庫を年齢別に分け、再発注停止や消化策を決めます。
- 受注残を約束日超過、在庫待ち、決済待ちなどに分類します。
- 受注数と出荷数を毎日比べ、残高が増える原因を特定します。
- セール前後に在庫、処理能力、集荷枠を共同で確認します。
季節変動が大きい店舗では、期首と期末だけの平均はセール時期に左右されます。 可能なら各月末の平均を使い、必要に応じて日次平均へ細分化してください。
関連する自動化ツール
滞留SKUの販売停止や在庫表示の修正が多い場合は、楽天商品情報の一括更新ツールで商品ごとの更新作業を短縮できます。
よくある質問
在庫回転率の実務では、計算基準と対象範囲を先にそろえることが重要です。
在庫回転率は高いほどよいですか?
高ければ資金効率は良くなりますが、高すぎると欠品や緊急仕入れが増えます。 欠品率、粗利額、仕入先のリードタイムと合わせて判断してください。
平均在庫は期末在庫だけで計算できますか?
期末在庫だけでも簡易計算できますが、セールや決算前の調整に左右されます。 月末在庫の年間平均を使うと、EC特有の季節変動を抑えられます。
FBAやRSLの在庫も計算に含めますか?
自社が所有するFBA・RSL在庫は、通常、全社在庫に含めます。 販売可能数とは分け、移動中や返品検品中の商品も状態別に管理します。
ECの受注残は何日までなら正常ですか?
公開された公式情報には、EC共通の正常日数や件数の基準はありません。 自店が表示した納期を上限とし、約束日超過ゼロを管理目標にします。
在庫回転率の計算式と計算方法を教えてください
計算式は売上原価 ÷ 平均在庫金額です。計算方法としては、まず対象期間の売上原価を確定させ、次に期首と期末の在庫金額を足して2で割った平均在庫金額を求め、前者を後者で割ります。在庫回転期間を知りたいときは、対象期間の日数をこの回転率で割ると、在庫が一巡するまでの日数になります。
店舗の「次の一手」を一緒に進めるなら
運営代行・ECコンサル・AIツールまで、現場を知るチームがワンストップで伴走します。
西尾 勝太株式会社ラクダ 代表
楽天SOY 2年連続受賞 / 楽天NATIONSリーダー店舗 / 楽天NATIONS AIエバンジェリスト
楽天市場の月商を5年で200万円→2億円に伸ばした現場の実践者。売れるECの方程式にAIを重ね、EC事業者の「次の一手」に伴走しています。



