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生成AIの情報漏洩を防ぐ|EC事業者が決めておくルール

生成AIから情報が漏れる経路は、学習・保存と共有・連携・外部の文に紛れた指示・個人のアカウントの5つに分けて考えます。 一番効くのは、入れてよい情報と入れてはいけない情報を先に決め、担当者ごとの判断のばらつきを減らすことです。 使うサービスと設定を会社で決め、アカウントも会社で管理します。確認日:2026年10月23日。
情報が漏れる経路

生成AIの情報漏洩のリスクは、情報が保存・共有・送信される経路ごとに分けて考え、対策を決めます。
以下は店舗業務に当てはめた想定例で、実際の事故例ではありません。
| 経路 | 店舗業務で起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 学習 | 顧客対応メールや仕入条件を個人向けAIに貼り付け、モデル改善に使われる場合があります | 契約・学習設定・評価送信時の例外を確認します |
| 保存と共有 | 注文CSVが会話に残り、スタッフへ送った会話リンクが転送されます | 保存対象・削除方法・リンクの閲覧範囲を確認します |
| 連携 | メールやストレージをAIにつなぎ、情報の取得・外部送信が可能になります | 接続先と権限を限定し、送信内容を確認します |
| 外部の文に紛れた指示 | 問い合わせメール内の指示で、意図しない操作をする場合があります | 不要な情報を接続せず、送信・公開を人が確認します |
| 個人のアカウント | 私用AIで売上資料や顧客対応を処理し、会社が履歴・設定・接続先を管理できなくなります | 承認済みの会社管理アカウントに限定します |
学習に使われない法人向けサービスでも、会話は保存され得ます。共有や外部連携は別の条件として確認します。
楽天市場の店舗では、返信案の作成に注文CSV全体を渡す必要があるか、入力前に見直します。
なぜ生成AIから情報が漏れるのか
チャットに入力した文章やファイルは、提供元のサーバーへ送られて処理され、設定によっては保存されます。入力した時点で社外のサービスに渡るため、学習設定だけでなく、保存・共有・連携の条件も漏洩の経路になります。
公式発表で確認できる事例
生成AIの情報漏洩の事件としてニュースで取り上げられた例のうち、提供元が経緯を公表しているものに、2023年3月のChatGPTの不具合があります。
OpenAIの発表では、オープンソースのライブラリの不具合で、一部の利用者に別の利用者の会話履歴のタイトルが表示されました。同じ不具合で、特定の9時間に利用していたPlus会員の1.2%について、氏名・メールアドレス・支払先住所・カードの種類と下4桁・有効期限が他の利用者に見えた可能性があるとされています。カード番号の全桁は表示されていないと説明されています。
利用者の操作に誤りがなくても、提供元の不具合で入力内容が見え得る例です。個人情報保護委員会も2023年6月2日に生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表し、OpenAIにも要配慮個人情報の取得等について注意喚起を行いました。
AIサービスの学習利用と法人向けプラン
各社の学習利用はサービス名だけでは決まらず、個人向けか法人向けか、設定や例外条件まで確認します。
以下は2026年10月23日に確認した通常のチャット利用の整理で、APIなどの別製品にはそのまま当てはめません。
| サービス | 個人向けの既定・条件 | 法人向けの条件 |
|---|---|---|
| ChatGPT | Free・Plus・Proの個人ワークスペースはデータ共有が既定で有効です | Business・Enterprise・Eduの入出力は既定で学習に使われません |
| Gemini | 18歳以上は「アクティビティの保存」が既定でオンで、学習を含む改善に利用されます | 対象のGoogle Workspaceでは、顧客の許可・指示なく生成AIモデルの学習・微調整に使いません |
| Claude | 改善利用を許可した会話などが対象です。全利用者共通の初期状態は公開情報では確認できません | Team・Enterprise等の商用サービスは既定で学習に使いませんが、評価送信等には例外があります |
| Microsoft Copilot | 2026年8月18日以降の更新版アプリは、入力・回答・ファイル内容を基盤モデルの学習に使いません | 法人向けでは入力・回答・Microsoft Graph経由のデータを基盤LLMの学習に使いません |
Copilotの旧版と更新版は条件が異なるため、更新版の説明を旧版アプリの利用者へ一律に当てはめないようにします。
承認時に確認する設定と値
次は店舗向けの設定案です。入力可否の審査に加え、承認者が設定値と確認日を記録します。
| サービス・利用形態 | 確認する設定・場所 | 設定案・承認条件 |
|---|---|---|
| ChatGPT個人向け | 「Improve the model for everyone」 | オフにします。新しい会話は学習対象外になりますが、評価送信した会話全体は改善に使われ得るため、業務情報を含む会話の評価は送信しません |
| ChatGPT法人向け | Business・Enterprise・Eduの契約と利用ワークスペース | 会社のワークスペースで利用し、既定の学習対象外という条件を確認します |
| Gemini個人向け | 「アクティビティの保存(Keep Activity)」と自動削除 | 保存をオフにし、業務情報を含む評価は送信しません。オンを例外承認する場合の自動削除は3か月を設定案とします。既定18か月、選択肢は3か月・36か月・自動削除なしです |
| WorkspaceのGeminiアプリ | 管理者による会話履歴の設定 | 対象契約を確認し、履歴オフを設定案とします。保存する場合は3・18・36か月から社内規程に合わせて選びます。既定は18か月です |
| Claude商用版 | 管理者による評価ボタンのフィードバック送信設定 | 送信を無効化します。送信すると関連会話全体等が最長5年間保存され、学習に使われ得ます |
| 法人向けMicrosoft Copilot | Microsoft Purviewの保存ポリシー | 管理者が社内規程で決めた保存期間を設定し、適用対象と期間を記録します。法人契約でも履歴は保存されます |
Workspaceの期間はGeminiアプリの説明で、すべてのWorkspace機能には当てはめません。公式説明は末尾に掲載しています。
入れてよい情報の区分

入力の可否は情報の種類と必要性で決め、通常利用で禁止する情報と、例外承認が必要な情報を分けます。
次の表は店舗向けの社内ルール案であり、法律や楽天市場の規定が一律に入力を禁止しているという意味ではありません。
| 区分 | 店舗業務の例 | 社内ルール案 |
|---|---|---|
| 顧客の個人情報 | 氏名・住所・電話番号・注文履歴・問い合わせ | 通常の文章作成では入力せず、実データ利用は必要性と取扱条件を別途審査します |
| 取引先の条件 | 仕入価格・掛率・支払条件・見積書 | 原則入力せず、契約上の秘密保持条件と承認範囲を確認します |
| 未発表の商品 | 発売前の画像・商品仕様・販促計画 | 公開前は原則入力せず、例外時は入力先・共有先も限定します |
| ログイン情報 | パスワード・認証コード・APIキー | 通常のチャットへの入力・添付は禁止し、承認された認証機能で管理します |
| 公開済みの情報 | 自店の商品説明・店舗案内・商品仕様 | 利用権限と個人情報の混入を確認し、承認済みAIで利用します |
個人情報保護委員会は、入力が利用目的の達成に必要な範囲か、個人データが学習に使われないか等の確認を求めています。
学習しない契約を選んだだけで、顧客情報の入力全般が適法になるとは判断できません。
氏名を消しても注文番号や問い合わせ内容から本人を識別できる場合があるため、架空事例や集計値への置き換えを優先します。
会議の録音・議事録をAIに入れるとき
会議の録音や議事録をAIで要約すると、発言者の氏名、取引先の条件、顧客対応の内容がまとめて入りやすくなります。録音・議事録は、含まれる情報のうち最も厳しい区分に合わせて入力の可否を判断し、承認済みの会社管理アカウントで扱います。社外の参加者がいる会議では、取引先との秘密保持条件で議事録をAIに入れてよいかも確認します。
ChatGPT・Gemini・Claudeの保存・共有ルール
会話・ファイルの削除範囲と保存期間
ChatGPTでは、学習をオフにしても履歴は残り、会話を削除してもLibraryに別保存されたファイルは消えません。保存済みメモリーも別に削除が必要です。一時チャットも安全目的で最長30日間保持され得ます。
個人向けGeminiは、一時チャットや保存オフ時のチャットも72時間保持します。すでに人がレビューしたチャットは、履歴を削除しても最長3年間残り得ます。
Claudeの個人向け・商用チャットは、会話を削除後、バックエンドから30日以内に削除されます。商用版には法令等の例外があり、個人向けで学習利用を許可したデータは最長5年間保持され得ます。履歴削除だけで処理が終わったと判断しません。
共有リンクの閲覧範囲と停止方法
スタッフだけに送ったつもりでも、リンクの転送や回答本文の共有で情報が広がります。
| サービス | 閲覧範囲・削除時の注意 |
|---|---|
| ChatGPT | 個人アカウントのリンクは、リンクを知る人なら誰でも閲覧できます。Business・Enterprise・Eduでは、同じワークスペースの対象メンバーに限定されます |
| Gemini | 公開リンクを知る人は誰でも閲覧・再共有でき、画像等が含まれる場合もあります。元のチャットを消しても公開リンクは残るため、別途停止します |
| Claude | Free・Pro・Maxの公開リンクはアカウントなしで閲覧できます。Team・Enterpriseは同じ組織内に限定されます。公開停止後も第三者のコピー等は消せません |
| 現行Copilot | 個人向けは受信者のMicrosoftアカウントでのサインイン、職場・学校向けは同じ組織内でのサインインが必要です。参照元ファイルへの権限がなくても、回答に転記された情報は読めます |
たとえば、仕入表を開けないスタッフでも、共有した回答に仕入価格が書かれていれば読めます。リンクを作る前に、回答本文・画像・添付の共有範囲を確認し、顧客情報や非公開条件を含む会話は共有しない運用を基本にします。
外部連携とプロンプトインジェクション対策
外部資料を読むAIには必要な情報だけを与え、読み取り権限と送信・更新の権限を分けて管理します。
法人向けMicrosoft Copilotでも、Web検索ではプロンプト等から生成した検索語句をBingへ送ります。この検索語句にはMicrosoft 365のデータ保護追加契約が適用されません。原則として全文を送る仕組みではありませんが、未公開商品名や仕入先名が検索に使われ得るため、外部検索の必要性を確認します。
問い合わせメールや仕入先資料には、AIに情報の取得・外部送信を命じる悪意ある文章が紛れる場合があります。
このように外部の文を通じて本来と異なる動作を促す攻撃が、間接的なプロンプトインジェクションです。
社内ルールでは、外部資料の処理に顧客一覧を同時接続せず、送信先・公開内容・更新対象を人が確認する運用にします。
読み取り専用でも、取得した秘密を含むURLへ通信する経路が残れば流出し得るため、外部通信も確認対象にします。
個人アカウントを防ぐ会社管理の方法
会社管理では利用者ごとにアカウントを用意し、入社から退職まで、権限と連携先を把握できる状態にします。
IPAは、無許可の個人AI利用を「シャドーAI」として取り上げており、本人任せの運用は管理上の課題になります。
会社管理は共通IDの使い回しを意味せず、利用者と権限を分け、使える場合は多要素認証も設定する運用にします。
外部委託先にも同じ入力制限を伝え、退職・契約終了時にはアカウント、共有権限、外部連携を見直します。
生成AIの社内ルールひな形
社内規程には、許可する業務・入力区分・承認者・事故連絡先を明記し、迷ったときに判断できる形にします。
責任者名や利用先一覧を補い、スタッフと委託先へ周知します。
- 目的と対象者:対象業務と利用者を定め、パート・外部委託先にも適用する範囲を明記します。
- 承認済みの利用先:サービス・プラン・利用方法・必要な設定を一覧にし、確認日を記録します。
- 入力情報の区分:本文・画像・PDF・CSVを対象に、禁止情報と例外承認の条件を定めます。
- アカウント管理:発行・権限変更・復旧・利用停止の担当者を決め、私用アカウントへの持ち出しを防ぎます。
- 共有と外部連携:共有範囲と接続先を限定し、評価送信や送信・公開・削除の承認方法を定めます。
- 利用記録と保存:日時・利用者・目的・情報区分・承認内容を記録し、記録の保存期間と削除方法を決めます。
- 出力の確認:商品説明や返信文を公開・送信する前に、正確性と機密情報の混入を担当者が確認します。
- 事故と見直し:連絡先と初動を定め、契約・設定・機能・接続先の変更時に再確認します。
利用台帳には顧客情報を丸ごと複製せず、情報の種類と原本の所在を残し、証拠の詳細は閲覧者を限定して管理します。
AI情報漏洩が疑われたときの対応
漏洩の疑いがあれば、原因の確定を待たずに責任者へ連絡し、追加送信の停止と証拠保全を並行して進めます。
個人情報保護委員会の通則編3-5-2に沿い、店舗では次の順番を基本に、必要な作業を並行して行います。
- 連絡と拡大防止:追加の入力・共有を止め、責任者へ直ちに報告し、公開リンクや連携を停止します。
- 証拠と事実の確認:日時・入力先・対象情報・共有状態を記録し、提供者にも取扱状況を確認します。
- 影響範囲の特定:対象者数、閲覧可能だった相手、学習・保存・外部提供の状況を調べます。
- 報告・通知と再発防止:法令・契約上の連絡を判断し、原因に応じて権限や運用を修正します。
報告対象は、要配慮個人情報、財産的被害のおそれ、不正目的の行為のおそれ、本人の数が1,000人を超える事態等です。
人数が少なくても報告対象になり得るため、個人データの種類や原因、法令上の除外条件も併せて確認します。
| 対応 | 報告対象事態を知った後の時期 |
|---|---|
| 速報 | 速やかに行い、目安は概ね3~5日以内です |
| 確報 | 原則30日以内、不正目的の行為によるおそれがある事態は60日以内です |
| 本人通知 | 状況に応じて速やかに行い、確報期限まで一律に待ちません |
速報の目安は待機してよい期間ではなく、調査が完了するまで報告や本人通知を保留できるわけではありません。
株式会社ラクダは、EC事業者のAI顧問としても活動しています。AIを業務に取り入れるときの決めごとや運用の見直しは、お問い合わせからご相談いただけます。
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よくある質問(FAQ)
学習をオフにすれば顧客情報を入力できますか
学習オフだけでは判断できず、利用目的、保存・共有・外部提供の条件まで確認して、会社の承認を得る必要があります。
個人向けの有料プランなら安全ですか
個人向けの有料プランでも法人向けと同じ条件とは限らず、契約・設定と会社側の管理機能を確認する必要があります。
顧客名を伏せれば注文CSVを渡せますか
注文番号や配送先などから識別できる場合があるため、氏名の削除だけで入力可能とせず、必要な集計値へ置き換えます。
会話を削除すれば情報漏洩への対応は終わりますか
別保存ファイルや共有リンク、連携先への送信が残る場合があるため、証拠を保全し、削除・停止の範囲を確認します。
少人数の店舗でも社内ルールは必要ですか
少人数でも入力区分と承認者を決め、担当者が不在のときの連絡先を明記すると、判断や事故対応が止まりにくくなります。
店舗の「次の一手」を一緒に進めるなら
AI社員アプリ・運営代行・ECコンサルまで、現場を知るチームがワンストップで伴走します。
西尾 勝太株式会社ラクダ 代表
楽天SOY 2年連続受賞 / 楽天NATIONSリーダー店舗 / 楽天NATIONS AIエバンジェリスト
楽天市場の月商を5年で200万円→2億円に伸ばした現場の実践者。売れるECの方程式にAIを重ね、EC事業者の「次の一手」に伴走しています。
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